教材 詳細
新編 土左日記 増補版
書名かな | しんぺん とさにっき ぞうほばん |
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著者(編者)名 | 東原伸明/ローレン・ウォーラー 編 |
著者(編者)名かな | ひがしはらのぶあき ろーれん・うぉーらー |
ISBNコード | 978-4-8386-0656-6 |
本体価格 | 1,500円 |
税込価格 | 1,650円 |
判型 | A5判並製カバー装 |
頁数 | 144頁 |
刊行日 | 2020年9月25日 |
在庫 | 在庫あり |
『土左日記』は、紀貫之(871?~946?)が任国を船出し呻吟の末帰京するまでを、女性の視点に仮託して綴ったわが国初の仮名による日記文学。次代の女流文学を領導する先駆となった貫之唯一の散文作品。
本書の特色は、従来『源氏物語』等で実践されてきた言説分析の成果に基づき、本文の分析(地の文・内話文・会話文・草子地・移り詞・自由間接言説・自由直接言説等)と注解を行っていることにあり、解説部分を英訳することで国外にも視野を開いた。
本書の特色は、従来『源氏物語』等で実践されてきた言説分析の成果に基づき、本文の分析(地の文・内話文・会話文・草子地・移り詞・自由間接言説・自由直接言説等)と注解を行っていることにあり、解説部分を英訳することで国外にも視野を開いた。
増補版において、参考文献を一部修正するとともに、大幅に増補した。
目次
凡例
解説 『土左日記』、語る主体の分裂・散文の方法と言説分析
本文
男もすなる「日記」といふものを、〈女も
某の年の十二月の二十日あまり一日の日の
廿二日に、「和泉の国まで」と、平らかに
廿三日。「八木のやすのり」といふ人あり
廿四日。講師、馬の鼻向けしに出でませり
廿五日。守の舘より、呼びに文持て来た
廿六日。なほ、守の舘にて、饗応し罵りて
廿七日。大津より浦戸を指して漕ぎ出づ
廿八日。浦戸より漕ぎ出でて、大湊を追ふ
廿九日。大湊に泊れり。医師、ふりはへて
元日。なほ、同じ泊なり。白散を、ある者
二日。なほ、大湊に泊れり。講師、物、酒
三日。同じ所なり。もし風波の、〈暫し〉と
四日。風吹けば、え出で立たず。まさつら
五日。風波止まねば、なほ同し所にあり
六日。昨日のごとし
七日になりぬ。同じ港にあり。今日は
八日。障る事ありて、なほ、同じ所なり
九日のつとめて、〈大湊より、奈半の泊を
十日。今日は、この奈半の泊に泊りぬ
十一日。暁に船を出だして、室津を追ふ
十二日。雨降らず。ふむとき、これもちが
十三日の暁に、些かに雨降る。暫しありて
十四日。暁より雨降れば、同じ所に泊れり
十五日。今日、小豆粥煮ず。口惜しく
十六日。風波止まねば、なほ、同じ所に
十七日。曇れる雲なくなりて、暁月夜
十八日。なほ、同じ所にあり。海荒ければ
十九日。日悪しければ、船出ださず
廿日。昨日のやうなれば、船出ださず
廿一日。卯の刻ばかりに船出だす。皆
廿二日。昨夜の泊より、異泊を追ひて
廿三日。日照りて、曇りぬ。「この辺り
廿四日。昨日の同じ所なり
廿五日。楫取らの、「北風悪し」と言へば
廿六日。まことにやあらむ、「海賊追ふ」
廿七日。風吹き、波荒ければ、船出ださず
廿八日。夜もすがら、雨止まず。今朝も
廿九日。船出だして行く。うらうらと照りて
卅日。雨風吹かず。「海賊は夜歩きせざなり
二月一日。朝の間、雨降る。午刻ばかりに
二日。雨風止まず。日一日、夜もすがら
三日。海の上、昨日のやうなれば、船
四日。楫取、「今日、風雲の気色はなはだ
五日。今日、辛くして和泉の灘より、小津
六日。澪漂のもとより出でて、難波に
七日。今日、河尻に船入り立ちて、漕ぎ
八日。なほ、川上りになづみて、「鳥飼の
九日。心許無さに、明けぬから、船を曵き
十日。障る事ありて、上らず
十一日。雨些かに降りて、止みぬ
十二日。山崎に泊れり
十三日。なほ、山崎に
十四日。雨降る。今日、車、京へ取りに
十五日。今日、車率て来たり。船の難しさ
十六日。今日の夜さつ方、京へ上る
補注
参考文献
英文解説
土左日記旅程地図
編者略歴